「今月も利益は出てるはずなのに、なんでこんなにお金が残ってないんだろう…」
こんな風に思ったこと、経営者なら一度はあるのではないでしょうか?
美容室を経営している方々からも、よくこの声を聞きます。
実はこれ、経営者が「利益」と「現金(キャッシュ)」を混同してしまっていることが原因です。
前回のブログでは、“現金を減らさない節税”として「減価償却」の考え方を紹介しましたが、今回はその延長として、
減価償却がどのようにキャッシュフローに影響するのか?
そして、なぜ「利益が出ているのに現金がない」という現象が起こるのかを掘り下げてみましょう。
■ 利益≠現金! その違いを知っていますか?
まず大前提として、「利益がある=お金がある」ではありません。
損益計算書(P/L)で見る“利益”は、いわば帳簿上の成果です。
対して、“現金”は、文字通り会社の口座に残っているお金です。
たとえば、
・クレジットカード決済で売上があったけど、まだ入金されていない
・大きな投資(設備購入など)をして現金が出ていった
・借入金の返済があった
こうした出来事は、P/Lの利益とは別に、現金を動かす要因になります。
つまり、P/Lだけを見て「今月も黒字だ」と安心していても、実際には現金が減っていて、資金繰りに苦しむ…ということが起きるわけです。
■ 減価償却は「お金が出ていかない経費」だった
前回お話ししたように、減価償却費は実際にはお金が出ていかないのに、経費として計上できるものです。
だから、利益が減るのに、お金はそのまま手元に残る。これが「キャッシュが増える仕組み」の一つです。
たとえばこんなイメージです:
- 売上:1,000万円
- 原価・人件費などの費用:800万円
- 減価償却費:100万円(でも実際には現金は出ていない)
この場合、P/L上の利益は「100万円」ですが、
実際に現金としては、減価償却費の分だけ“多く”残っている=現金は200万円残っていることになります。
このように、減価償却をちゃんと理解していると、**「キャッシュベースで会社の状態を把握できる」**ようになるのです。
■ キャッシュフロー経営とは?
経営が安定している企業は、すべて「キャッシュフロー経営」ができています。
つまり、帳簿の利益ではなく、「実際にお金がどう動いているか?」を常にチェックしているということです。
キャッシュフロー経営では、以下のようなことがポイントになります:
- 設備投資などでお金が出ていくタイミングを見極める
- 借入金の返済スケジュールと現金残高をリンクさせる
- 減価償却の金額と利益を踏まえた資金計画を立てる
- 「利益が出てるのにお金がない」を防ぐための管理をする
これらの管理ができていれば、たとえ一時的に赤字になっても、手元資金で乗り切ることができる。
逆に、利益が出ていてもキャッシュが回っていなければ、黒字倒産ということも現実にあり得ます。
■ 減価償却とキャッシュを味方につける
経営者として「利益を出す」ことは当然ですが、同時に「お金を残す」ことができなければ、会社は成長できません。
そしてその鍵を握るのが、減価償却の理解とキャッシュフローの把握です。
美容室経営は、日々の売上だけでなく、スタッフの育成、設備投資、集客、様々な視点から未来を見据える必要があります。
その中で、経営者自身が財務の基本を理解していることは、まさに“最強の武器”になります。
「お金を残すために、どんな行動を取ればいいか?」
この視点があれば、どんな判断もブレなくなります。
次回予告
次回は、キャッシュフロー経営の次のステップとして、**「借入金と財務バランスの見方」**をテーマにお届けします。
「借金があるのは悪いこと?」
「返済は急ぐべき?それとも…?」
美容室経営における“借入の正しい考え方”を、一緒に見直していきましょう!
【コンサルタント型美容ディーラー】株式会社ADAW 和田浩