「もっと売上を上げたい」「できるだけコストを減らしたい」
この2つは、どんな経営者であっても必ず意識していることだと思います。
もちろん、この考え方自体は間違っていません。実際に、売上が増えれば手元に残るお金(キャッシュ)が増える可能性はあるし、コストが削減できれば、利益は増えます。
ですが、「キャッシュを増やす経営」を本気で目指すなら、もう一歩踏み込んで考えなければいけません。
それは──
「利益が出ている=キャッシュが増えている」ではない、という事実です。
キャッシュが残らない経営者の典型パターン
私がこれまで多くの美容室経営者と関わってきて感じるのは、「利益は出ているはずなのに、なぜかお金が残っていない」と悩んでいる方が本当に多いこと。
「税理士さんに頼んでるし、ちゃんと黒字って言われてるんだけど…」
「なのに、いつも資金繰りが苦しい」
こんな声、何度も聞いてきました。
その原因の多くは、「損益」と「資金(キャッシュ)」の動きの違いを理解していないことにあります。
この違いを理解することこそが、キャッシュを増やす経営の第一歩なんです。
キャッシュを増やすための3つの視点
では、具体的にどうすればキャッシュを増やせるのでしょうか?
売上アップやコスト削減に加えて、次の3つの視点を持つことがとても重要です。
①「お金の出入りのタイミング」を把握する
売上が立っても、現金が入ってくるのは翌月や翌々月。
逆に、仕入れや外注費、人件費などは先に支払いが発生する。
この「ズレ」が資金繰りに影響を与えます。
例えば、たくさん売れた月の翌月に資金繰りが苦しくなるのは、入金よりも支払いが先に来ているから。ここをしっかり把握することが大切です。
②「減価償却」を正しく理解する
前回の記事でも触れたとおり、減価償却は「現金が減らない費用」です。
P/L(損益計算書)上では費用に計上されますが、実際には現金が出ていない。
この性質を理解することで、「損益では利益が出ていなくても、キャッシュは増えている」ということが起こりうる、という感覚を持てるようになります。
③「借入金と返済の関係性」を理解する
借入をすれば、一時的にキャッシュは増えます。
でも、その返済は「損益に計上されないキャッシュアウト」です。
つまり、利益が出ていても、借入返済の負担が大きければキャッシュはどんどん減っていきます。
この感覚を持っておくことはとても大切です。
「利益が出ているから大丈夫」と思っていると、思わぬ資金ショートを招くリスクもあるのです。
キャッシュフロー経営こそ、美容室経営の安定につながる
キャッシュを増やすには、「売上を伸ばす」「コストを削る」だけでなく、
“お金の流れ全体”を設計していくことが何より大切です。
それが、キャッシュフロー経営です。
現金の出入りをコントロールし、将来の支出に備え、安心して投資ができる体制を整える。
こうした視点をもって経営に取り組めるようになると、美容室経営は一気に安定感が増していきます。
そしてこのキャッシュフロー経営の考え方は、B/S(貸借対照表)の理解にもつながります。
次回は、いよいよ「キャッシュフロー計算書」についても触れながら、
なぜ利益が出ていてもお金が増えないのか?の「本質」をさらに深掘りしていきたいと思います!
【コンサルタント型美容ディーラー】株式会社ADAW 和田浩