前回の記事で、「キャッシュフロー経営」の大切さをお伝えしました。
売上を増やすことだけが正解ではなく、支出のタイミングやお金の流れを理解し、コントロールしていくことが経営の安定には欠かせない──という話でしたね。
今回は、そのキャッシュフローを悪化させる「在庫」の落とし穴について触れていきます。
在庫は“お金”が“商品”に姿を変えたもの
意外と見落とされがちなのですが、在庫はまさに「キャッシュを減らす要因」のひとつです。
たとえば、カラー剤やシャンプー、スタイリング剤など。
たくさん仕入れて店頭やバックヤードに並んでいる状態は、言い換えれば「現金がお金以外の形に変わって眠っている状態」です。
仕入れた瞬間に現金は出ていきますが、それが売れて現金として戻ってくるまでには時間がかかる。
もしそのアイテムが売れ残れば、ただただ“お金が動かないまま寝ている”状態になります。
つまり、在庫が多い=キャッシュが動かず滞っているということなんです。
「値引き交渉」より「在庫を減らす」ことの方がキャッシュに効く
美容室経営者の中には、仕入れに関して「なるべく安く」「まとめて買って割引を受けたい」と考える方も多いと思います。もちろん、交渉して単価を下げるのは一つの経営努力です。
でも、それ以上に重要なのが「そもそも持ちすぎていないか?」という視点。
例えば、1年で使い切れるか分からない在庫を「割引されるから」と多めに仕入れてしまえば、目先の仕入れコストは下がっても、キャッシュフローはむしろ悪化します。
しかも、在庫が多くなると管理の手間も増えるし、商品が古くなって廃棄することにもなりかねません。
本当にキャッシュを残す経営をしたいなら、「値引き交渉」より「在庫数を減らす」ことに目を向けるべきなんです。
現金が残りやすい在庫管理のコツ
では、どんな工夫をすればキャッシュフローに優しい在庫管理ができるのでしょうか?
いくつかポイントを紹介しますね。
①在庫アイテム数を絞る
「たくさん種類があった方がいい」と思っていませんか?
でも実際には、あまり動かない商品が棚を占領していたりします。
思い切ってアイテム数をシンプルにすることで、在庫金額を大幅に減らすことができます。
②使い切れるスピード感で発注する
たとえ割引があっても、半年以上かけて使うような量は仕入れない。
2〜3ヶ月以内に使い切れる分だけをこまめに仕入れることで、現金が長く滞留するのを防げます。
③“使っていない在庫”を定期的にチェック
「在庫としてあるのは知ってるけど、最近使ってないな…」
そんな商品、バックヤードにありませんか?
毎月、もしくは四半期ごとに“動いてない在庫”を洗い出す習慣をつけるだけで、仕入れの見直しにつながります。
キャッシュフロー経営は「在庫の管理」からも始まる
ここまで読んで、「あ、うちも在庫多いかも…」と感じた方。
今すぐできるキャッシュ改善の第一歩は、まさに在庫の見直しです。
たくさん売ることも大事、コストを下げることも大事。
でも、それ以前に“いま自分の店のお金がどこに溜まっているか”を把握し、必要な分だけ動かすことがキャッシュフロー改善の一番の近道なんです。
次回は、ここで触れた「お金の流れ」の全体像──
キャッシュフロー計算書の構造とその読み解き方について、わかりやすくお伝えしていきます!
【コンサルタント型美容ディーラー】株式会社ADAW 和田浩